はじめに
安全の欲求は安全や安定、秩序を求める欲求です。ここでは『ITエンジニアとして現場に秩序を形成し、安心して仕事がしたいという欲求』と定義します。
ITエンジニアとして安心して仕事をするにはどうしたら良いのでしょうか。
責任が行方不明
失敗例
「○○って言ったよね!?」
「○○なんて言ってない!○△と言ったんだ!」
「現に今、○○になってるよね!?」
このような喧嘩は日常茶飯事だった。彼らはいつも言った言わないで揉める。次は自分の番ではないかと、ヒヤヒヤしながら仕様書を書いている。成功例
メンバーは適宜ディスカッションを行い、内容を議事録として、プロジェクト管理システムにアップロードする。
仕様の時系列が問題になった場合は、議事録を検索すれば経緯は明らかとなる。彼らは安心して発言ができる。
言った言わない問題は、責任の所在に関わります。仕様変更や認識の相違が大きな損失を発生させるこの業界では日常かと思います。
また仕様に関しては『明示的に説明されていないが、言外にこのような意味があった』みたいな落とし穴があったりします。言ったつもりで言ってない、理解したつもりで理解してない。
このような状況を防ぐには毎回、議事録をきちんと残し、誰が何を発言したのか記録しておく必要があります。
これは監視カメラに似ています。コンビニの監視カメラは強盗や万引きなどの犯罪、店員のサボりの抑止力になっています。何もなければ映像を見返すことはほとんどありませんが、何か起きたときには店員やお客様を守ってくれる証拠になります。無実を証明してくれます。サボりはバレます。
事故から身を守る
失敗例
現場には様々な取引先の人間が自由に出入りでき、クリアデスクなどの基本的なセキュリティ対策が行われていない。コンプライアンスに対する意識が低く、不正コピーやライセンス違反が存在する。上層部の人間がこのことを把握する仕組みが存在せず、いつセキュリティ事故が発生してもおかしくない環境で作業をしている。成功例
現場には入館証を持った人間のみが出入り可能になっている。定期的なセキュリティ説明や法律改正に関する解説が行われており、現場のITエンジニア全員が一定の水準のセキュリティ知識とコンプライアンスの意識レベルを維持している。USB差込を自動検知するシステムなど、インシデント予防のための装置が整備されている。
タコ足配線が原因で火災が発生する、シュレッダーに巻き込まれて怪我をするなど、身の回りをよく観察すると、生活の中には事故の危険が多く潜んでいます。
それでも無事に済んでいるのは危険な使い方をしないよう、各商品に『安全にご使用頂くために』という説明文が書かれているからです。ニュースによって全国に向けて発信されることもありますね。どんな時どのような行動が危険か周知することで、多くの使用者に注意を促しています。
業務用の機械ともなれば取扱うために免許や資格が必要になります。危険な場合はカバーやセンサーを付けて事故を防止しています。また車や一定の排気量を超えるバイクには車検が義務付けられており、最低限のメンテナンスや正常に動作するかなどの確認が行われています。
ITエンジニアは様々なルールに囲まれています。それはセキュリティ事故を始めとするインシデントを未然に防ぐためです。
取扱説明書は最新ですか?
家電の取扱説明書は基本的に買った時だけ読めば大丈夫です。命や怪我の危険がある場合は、商品自体にシールが貼られており、常に目に入るようになっています。
一方、ITエンジニアの場合はどうでしょうか。日進月歩で進化する技術、ウィルス対策ソフトは日々ブラックリストを更新し、開発者は様々な言語やライブラリを使ってアプリを作成するーー取り扱う技術やそのバージョンが変われば、もう一度説明書を読み返す必要があります。
ゲームアプリのバージョンが上がると機能が増えることを思い出して見て下さい。新しい使い方を覚えないと楽しく遊べませんよね。
それにメッセージ機能やチャット機能が追加された場合はどうでしょうか。『個人を特定する情報や第三者を誹謗中傷する文章は投稿しないで下さい』『利用規約についてはリンクを参照下さい』という注意書きを目にしませんか? 最初から投稿できない単語が設定されている場合もあると思います。
もしITエンジニアが古いルールのまま運用を続けたり、他の開発者に新しい機能の使い方を知らせなかったりしたら、どうなるでしょうか。重大な事故が発生し、直接作業していた他の開発者が被害を被るかもしれません。
使い方をきちんと理解していますか?
これらは使用者を危険から守るためのルールや決まり事です。もし使用者が無視して使ったらどうなるでしょうか。ゲームならお金と時間を失うだけかもしれませんが、工業機械では体の一部や最悪命を失う危険もあります。
ITエンジニアの場合はどうでしょうか。何を危険とし、何を禁止するか。これは現場によって多種多様で、一律に定義できるものではありません。現場毎に使っている技術が違うのですから、当たり前ですね。
問題は新しく入ってきた開発者にきちんと周知できているか、事故が起きそうな作業の場合は必ず確認を行っているか、そして開発者は技術を理解して使っているかです。
理解できずとも『ここから先は自分は知らない』としっかり認識でき、不安を感じたら誰かに直ぐ相談できるような環境であれば安心です。
おわりに
新人さんと現場の古株さんとで、現場のセキュリティについて話をする機会はありますか?
- 暗黙の了解として処理されている決まりやルールはないか。
- ルールの共通認識は合っているか。認識違いはないか。
- 古株さんが知っていて、新人さんが知らないルールはないか。