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【IT哲学】社会的欲求 / 所属と愛の欲求 - マズローの自己実現理論をITエンジニアで考える

カテゴリ:IT哲学(ITエンジニアの自己実現)
Ryozo TsuboiによるPixabayからの画像 (遠くを見つめる茶トラ猫

 

はじめに

社会的欲求 / 所属と愛の欲求は社会的欲求とも呼ばれます。ITエンジニアとして仕事をしている以上、すでに何らかの組織には所属している筈です。

ここでは『ITエンジニアが所属している組織の中で、自分の居場所を得たいという欲求』『ITエンジニアとして信頼に値する理解者を得たいという欲求』と定義します。

ITエンジニアの居場所はどこにあるのでしょうか。またITエンジニアの理解者は誰でしょうか。

役に立てない優れた技術

  • 失敗例
    彼の趣味はプログラミングであった。彼は様々な先進的な技術やテクニックを身に付けたが、会社で求められているのは古臭いレガシーな開発手法だった。
    企画書はことごとく却下され、居場所をなくした彼は会社を去っていった。
  • 成功例
    やる気のある新人が開発環境改善の企画書を作成した。やや稚拙な部分があるものの、アイデアとしては間違っていなかった。先輩は新人の着眼点を褒めた。
    メンバーは協力して推敲や実験的運用を行った。結果、手直し後の企画書は無事受理され、開発はより効率的に進められるようになった。

誰かが何かに気が付き、提案したとき、『良いものは良い、悪いものは悪い』と言える土壌は形成されているでしょうか。

役に立てないと悟った社員は居場所をなくしてしまいます。逆に役に立てると分かった社員は「私はここに居てもいいんだ」と自信を持てるようになります。

身に付けた技術が通用しないなら、努力して向上させていけばいいです。しかし不可抗力で宝の持ち腐れ状態が長く続くと、実力が発揮できずフラストレーションが溜まってしまいます。

『まずやってみる』ためにはそのための土壌が必要です。表面上取り組んでいるつもりでも、あれこれ理由を付けて実践しない、本質を理解できていないケースも多いです。

できれば成功例のような『こうしたらいい、ああしたらいい』が直ぐに理解され、受け入れられるような環境を作っていきたいですね。

尊敬できる先輩とは

  • 失敗例
    とあるコードが客先のITエンジニアから絶賛された。そのコードの価値を理解していたのは、書いた本人とその客先のITエンジニアだけであった。
    会社はプロジェクトの成功を褒め称えたが、彼本人にその評価が伝えられることも還元されることもなかった。
  • 成功例
    彼の現場には尊敬できる先輩がいた。彼は先輩にコードレビューを依頼した。
    駄目出しもされたが、何より彼が嬉しかったのは、苦労して書いた会心のコードを褒めてもらえたことである。それだけで彼はまた良いコードを書こうと思えた。

『断琴の交わり』の成り立ちを知っていますか? 書いたコードを理解してくれる誰かがいるというのは、とても幸せなことです。仕事上、友情というのは一長一短があるので、ここではあくまで『理解者』としておきましょうか。

誰かの書いたコードを理解するには、書いた本人以上に優れた技術力が求められます。また書いた本人の現在のコーディング能力やスケジュールなどの状況も考慮に入れる必要があります。

例えばスケジュールが押していて仕方なく突貫工事したコードをレビューに出すとします。この時、『納期が○○日で時間がありません』と一言添えておけば、レビューを依頼された側もレビューした人の状況を把握することができます。

コードレビューをするということは、レビューを依頼した人のことを理解するということでもあります。技術力と理解力を磨いて『尊敬できる・目標にできる先輩』になりたいものです。

上司と部下のすれちがい

ITエンジニアには『私のこの技術・長所が認められていて、ここで一緒に仕事をしていてもいいんだ』という自分を許す感覚が必要です。フリーランスであれば『私はこの業界でやっていける』という自信のようなものでしょうか。

これらは客観で測れません。あくまで自身の居場所と認識するのは本人です。なので本人が自覚しないと意味がないです。

例えば上司と部下が互いにすれ違っているケースはあるあるです。上司は『あいつにしかできない案件もある。いなくなられたら困る』 と思っていても、部下が『こんなの誰にでもできる。私はどうでもいい人材なんだ』と思ってしまっていたら悲しいです。

部下はどうして誰にでもできると思ってしまったのでしょうか。上司は何を伝えれば良いのでしょうか。

いくつかの記事を見る限り、この点を見落としがちなのではないかと考えています。というより聞いたときには、時すでに遅しというパターンが多いのかもしれません。

おわりに

自分の社内(業界内)でのITエンジニアとしての居場所を考えてみましょう。

  • 自分が役に立てていることは何か。
  • 誰かを褒めたことはあるか、誰かに褒められたことはあるか。
  • 自分にとってのITエンジニアとしての『理解者』は誰か。

就活中または組織に属していない方は、孤独や不安を感じている最中かもしれません。しかし焦らず慎重に、自分に合う会社を見つけて下さい。